かつて「乳酸は疲労物質であり、筋肉を疲れさせる悪者だ」と考えられていた時期がありましたが、現在の運動生理学ではその定説は覆されています。乳酸は「疲労の産物」ではなく、体を動かすための「貴重なエネルギー源」です。
乳酸ができる仕組み
運動をして糖(グルコース)が分解される際、酸素の供給が追いつかなくなると「ピルビン酸」という物質が作られ、それが変化して「乳酸」になります。
以前は、この時に体が酸性に傾くことが疲労の原因だと思われていましたが、実際には乳酸ができることで細胞内の酸性化を抑えたり、エネルギーを再合成したりする役割があることがわかってきました。
乳酸はどう使われるのか
乳酸はただ蓄積するのではなく、以下のルートでエネルギーとして再利用されます。
□筋肉の燃料: 遅筋繊維(持久力のある筋肉)や心筋(心臓の筋肉)に取り込まれ、再びエネルギーとして燃焼されます。
□肝臓で糖に復活: 血液に乗って肝臓へ運ばれた乳酸は、再び「糖(グルコース)」に作り替えられます。これをコリ回路と呼びます。
なぜ悪者にされていたのか?
「疲れた時に乳酸が溜まっている」という相関関係があったため、原因と結果を混同してしまったのが理由です。
実際は激しい運動でエネルギーを大量に消費した結果、乳酸が作られているだけだったのです。
本当の疲労の原因は?
現在、運動による疲労の主な原因は以下のようなものだと考えられています。
□リン酸の蓄積: 筋肉を動かすエネルギー(ATP)が分解される際に出るゴミ。
□活性酸素: 細胞にダメージを与える。
□神経伝達の低下: 脳から「動け」という指令がうまく伝わらなくなる。
疲労回復するための対策
1.リン酸の蓄積を抑える
リン酸が蓄積すると、筋肉の収縮に必要なカルシウムイオンの働きが阻害され、力が出にくくなります。
□積極的休養:完全に静止するよりも、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を行う方が血流が維持され、筋肉内に溜まったリン酸や老廃物の排出が早まります。
□クレアチンリン酸の再合成を助ける:ATPを再合成するには「クレアチン」が役立ちます。サプリメントや赤身の肉などを摂取することで、エネルギー代謝の回転をスムーズにします。
□重炭酸温浴:重炭酸イオンを含む入浴剤を使用した入浴は、血流を劇的に改善し、代謝産物の回収をサポートします。
2.活性酸素によるダメージ中和
激しい運動やストレスで発生する活性酸素は、細胞膜を酸化させ、筋肉の修復を遅らせます。
□抗酸化物質の摂取:ビタミンC・E( 野菜や果物、ナッツ類)、ポリフェノール:(ベリー類や緑茶)、アスタキサンチン:(鮭やエビ)
□十分な睡眠:睡眠中に分泌される成長ホルモンには、細胞の修復を促し、酸化ストレスを軽減する強力な作用があります。
3.神経伝達の低下を改善
「脳は動かしたいのに体が動かない」という中枢性疲労には、神経系のメンテナンスが必要です。
□BCAAの摂取:血液中のBCAAが不足すると、脳内に疲労を感じさせる物質(セロトニン)が増え、神経伝達が鈍ります。運動前や運動中の補給が有効です。
□ビタミンB群の補給:特にビタミンB1、B6、B12は神経の働きを正常に保つために不可欠です。豚肉、レバー、全粒穀物などに多く含まれます。
□良質な脂質(オメガ3脂肪酸):
神経細胞の膜を柔軟に保ち、伝達速度を維持するために、青魚などの魚油を積極的に摂りましょう。
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これらは単独で行うよりも、「血流を良くしてゴミを流す(リン酸)」+「抗酸化」+「通り道を整える(神経)」というセットで考えることで、より早く「動ける体」を取り戻すことができます。
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